上尾中央総合病院

上尾中央総合病院

埼玉県上尾市にある上尾中央総合病院は、「高度な医療で愛し愛される病院」の理念のもとに運営されている、急性期の地域医療支援病院およびがん診療指定病院。
一都6県に病院や介護老人保健施設などを展開する上尾中央医科グループの基幹病院でもある。病床は733床。









竹波純子1
VOICE

竹波純子さん #1

役  職 :  緩和ケア認定看護師

所属施設 :  上尾中央総合病院

患者さんの状態にマッチする
部分を見つけながら、上手に活用していきたい

Q. 今回の研修を受講しようと思った理由を教えてください

A. 私はリンパ浮腫看護外来を担当するなかで、数多くの終末期のがん患者の方に関わってきました。
そこで感じていたのは、終末期の患者さんに楽になってもらうには、従来の看護技術や知識だけではカバーしきれない限界があるということでした。
そんなときに、英国式リフレクソロジーのことを知ったんです。イギリスは補助療法に力を入れている国でもあり、ケアのバックボーンがしっかりしているイメージがありましたし、看護師が日頃から直接触れることのできる足にアプローチできる点が有意義だと感じて、学んでみたいと考えました。

竹波純子2

Q. それまでリフレクソロジーにはどんな印象をもっていましたか?

A. 正直言って、足裏を刺激するケアということで、「かなり痛いのでは?」という印象があったんです。
でも教材を見ると、「痛みを伴わない施術が良い施術である」とはっきり書いてあって、講師の先生からも「痛くありませんよ」と説明されて少し驚きました。
それなら、がん患者さんの心身の負担を軽減できる可能性があると感じましたし、ケアとして活用できるのではないかと期待が高まりましたね。

竹波純子3

カリキュラムの特長はどんな点だと感じましたか?

A. ひとつは、身体の仕組みや栄養素に関する詳細な記述があることが挙げられると思います。リフレクソロジーは、足裏への刺激を身体の各部に反射させて、身体の恒常性を保たせようとするケアなんですね。
つまり足の裏を使って、血液やリンパの流れを良くして全身にアプローチしていく施術です。
たとえば、栄養素が全身状態にどのように作用していくか…というところまで把握してアプローチしていくことが重要といえます。
栄養素のもつ特徴や効果など、アセスメントをしていく上で必要な要素が細かく書かれていて、リフレクソロジーの施術スキルの前提として知っておくべき知識が、すべて日ごろの看護に役立つ印象を受けました。
足裏を触って終わりではなく、その人の全身状態を改善していくために必要なさまざまな要素が理解できて、生活改善につながるケアとして学べる深さがあると感じたんです。

竹波純子4

Q. 実技研修については、参加されてどのような学びがありましたか?

A. 施術の際に、身体の向きを少し変えるだけで力の入り具合が変わったり、効果の出やすい力のかけ方なども実技研修を通じて得ることができました。
講師や上級者の方が「施術される側」になってくれますから、ダイレクトに意見や感想を聞くことで腑に落ちることがたくさんあります。実技研修は2回あることも、実践的な理解が深まってありがたかったですね。

竹波純子5

Q. 今回の研修で得た技術を、最初どんなふうに試してみましたか?

A. 手術中に立ちっぱなしで疲れるという先生方が、「ぜひやってみてほしい」とおっしゃるので、最初に試してみたんです。
先生の中には、「痛くなければ、物足りないんじゃない?」と言う方もいたのですが、施術を終えると、
「すごく気持ちよかった」「次の日も問題なかった」という声ばかりで安心しましたね。
院内でまずは医師に理解してもらうことはすごく大事なことで、自分がいいと思うものは患者さんに勧めてくれることも多いんです。最初の入り口として、現場のニーズと自分の時間がうまく合うようであれば、職場の身近な人に良さをまず理解してもらうことが大切だと感じます。

竹波純子6

Q. JRECの資格取得を通じて得られた知識やスキルを、今後どのように看護の現場で
 活かしていきたいですか?

A. 講師の先生から聞いた中で印象的だったのは、「すべてのことを実践しようと思わず、まずは患者さんにふさわしいことを、パーツごとに選んで活用することから始めてください」という言葉でした。
患者さんの状態にマッチする部分をうまく探しながら、必要な部分にうまくリフレクソロジーを活用していきたいですね。「ここの部分にアプローチしたら効果があるかもしれない…」といった具合に、部分的なアプローチは実際の臨床でも活かしていけるのではないかと思います。
足は清拭のときに軽くふいて終わることもあるんですが、足の裏に丁寧に保湿剤を塗るだけでも患者さんの心地良さは違いますし、リフレクソロジーをそうしたケアの中に少しずつ活かしていければいいな…と考えています。
そして今回、リフレクソロジーについて学んだことで、人の身体に触れる看護師の仕事の責任について、いっそう意識が深まったように思います。
患者さんに触れながらケアを行う際に、知っておくべき知識がこんなにも多くあることを再認識しました。私たち看護師には大きな責任が伴うことを忘れてはいけないな…とあらためて思い起こされましたね。

竹波純子7
安江佳美さん
VOICE

安江佳美さん #2

役職 : がん性疼痛看護認定看護師

所属施設 : 上尾中央総合病院

患者さんに提供していくケアの質を上げていくことができます

Q. 今回の研修を受講しようと思った理由を教えてください。

A. がんの患者さんが辛い症状を訴えているときに、「自分が看護師としてできることはもっとないだろうか…」と日頃から感じていたんです。
終末期にあるような患者さんに対して、提供できるケアの技術や知識を持ちたいという思いがあったんですね。
そんなときに、先輩の看護師からリフレクソロジーのことを聞いて興味をもち、自分自身のケアの幅を広げてみたいと考えて受講しました。

安江佳美1

Q. 患者さんのどのような状態を改善したいと考えたのですか。

A. 患者さんが「身体がだるい」「足がだるい」と訴えるのを改善する手立てがなかなかない…と感じていたのが正直なところでした。
薬剤によるアプローチを行ったり、状況に応じてリハビリを施してみても状態はなかなか変わりません。私自身、消化器内科で長く仕事をしていたので、全身の倦怠感を改善するためのアプローチがすごく難しいことに直面していたんです。
何よりも私自身、がんで苦しむ患者さんの辛さを取り除いてあげたいという思いで、がん性疼痛看護認定看護師の資格を取ったのに、「自分のできることは限られている…」という思いが募るようになっていたんですね。
そうした状況を何とかしたいと思ったのが、リフレクソロジーを学ぶ動機になりました。

安江佳美2

Q. 実際に学んでみて、そうした部分が改善できるという手応えは得られていますか。

A. 患者さんにきちんとアプローチできたあとの反応が違うと感じています。
表情にも「気持ちよかった」と感じられる反応があったりしますから、少しずつ手応えも得られています。
目の前の患者さんに、自分で学んだ技術や知識を提供できたという喜びが湧く点でもうれしさがありますね。

安江佳美3

Q. それまでリフレクソロジーにはどのような印象をもっていたのですか?

A. 私はマッサージなどにもあまり行ったことがなかったので、詳しい知識はもっていませんでした。
「足裏のマッサージで、気持ち良いんだろうな…」というイメージがあるという程度でした。
でも実際に学んでみて、単に足の裏を刺激することだけではない「深み」があることを知ったのは新鮮でした。

安江佳美4

Q. たとえばどういった点についてそう感じたのですか?

A. リフレクソロジーとは、足裏を刺激することによって、全身へのアプローチにつなげていくものであるのが分かった点です。
私がいる緩和病棟は、つねに患者さんの全身状態を看ていくことが必要です。さらにホルモンに関する知識など、婦人科に関する基本的な学びなどがあらためて得られるような学習内容だったんです。
リフレクソロジーは、不十分な知識をもとに施術を行うと、影響を与えてはいけない部分にそれが及んでしまうリスクを伴ってしまいます。むやみにアプローチするのはダメで、方法を考えて行わなければ、施術を受ける側も不快になってしまうことを知りました。
正直、気軽に考えて、軽い気持ちで受講した面もあったのですが、きちんと学んでいく必要のある事柄が網羅されていることを実感。看護師として持つべき必要な知識が得られていく資格であることがよく分かりましたね。

安江佳美5

Q. リフレクソロジーを実際に施術してみて、いかがでしたか。

A. 最初に自宅や外出先で家族や友人に試してみたのですが、姿勢や力のかけ方などが難しくて、あまり気持ち良さは感じてもらえなかったみたいで、反応は薄かったんです(笑)。
それが実技講習で、講師や上級者の方に施術させてもらって、刺激を加えるポイントについて理解が深まりました。
やはり、リフレクソロジーは自分でどれだけ実践するかが大事ですから、これから感覚的なものもしっかりと身に付けていきたいと思います。

安江佳美6

Q. その意味でも今後、JRECの資格取得を通じて得られた知識やスキルをどのように看護の現場で活かしていきたいですか?

A. たとえば、患者さんにエフルラージュなどの手技を行うときに、リフレクソロジーのスキルを活かすこともできるかな…と思います。
足に重点を置いて、ゆっくり時間をかけて行えますから、患者さんにとっても心地良いはず。指間やつま先などを触れながら時間をかけて丁寧に行うことができますね。
とくに、足のだるさを取るのはなかなかできませんから、そういう機会にリフレクソロジーの技術を使って、患者さんに少しでも心地良さを感じていただけたら…と思います。そうしたアレンジによって、日常の看護業務に活かせる部分はあると思いますし、患者さんに提供していくケアの質を上げていくことができます。
そして、リフレクソロジーを学んで印象に残ったのは、ケアに際して「気持ちをきちんと患者さんに向ける」ことの重要さでした。当たり前の話なのですが、そんな基本的な部分が、普段のいろんな業務に忙殺されて意識しきれないことが多いんです。
患者さんの足を触りながら、最後まで丁寧に手を添えていくケアの大切さを今一度学んで、患者さんと真摯に向き合う、気持ちを向けるということがより意識できるようになったと思いますね。

安江佳美7

編集部より

次回は、実践状況を取材させていただき、読者の方々に紹介していきますのでご期待ください。


JCHO 船橋中央病院

船橋中央病院

地域包括ケアの推進を目指し全国にて医療機関や介護施設運営を展開する独立行政法人地域医療機能推進機構が運営。
船橋エリアの地域医療の要となる地域中核病院。病床は464床。









石田智恵子さん1
VOICE

石田智恵子さん #1

役  職 :  外来師長・がん看護外来責任者・がん化学療法看護認定看護師

所属施設 :  JCHO 船橋中央病院

私自身が効果を実感していたので、
患者さんのリラクゼーションに使いたいと思いました

Q. 今回の研修を受講しようと思った理由を教えてください

A. 15年ほど前から、がん患者さんの看護に関わるようになり、2005年に「がん化学療法看護認定看護師」の資格を取得しました。
抗がん剤治療では様々な副作用への対処が求められます。「吐き気」や「痛み」といった症状は薬を使ってある程度コントロールできますが、患者さんがしばしば訴える「倦怠感」は薬での改善の難しい不快な症状です。
これまで呼吸法や漸進的筋弛緩法(※)といったリラクゼーション法による改善を図ってきましたが、「もっと患者さんが楽になる技術はないだろうか。リフレクソロジーが効果的なのでは」と考えたのが受講のきっかけです。

※筋肉の緊張を感じた際に意識的に弛緩させることができるようトレーニングする方法。

石田智恵子さん2

Q. 患者さんの倦怠感を改善するために学びたいと思われたのですね

A. 抗がん剤治療で感じる不快な症状をリフレクソロジーだけで改善できるとは思いませんが、そのリラクゼーション効果に期待しています。
私が20代の頃に初めて体験した足裏マッサージが、現在受講しているリフレクソロジーと同じ「英国式」のマッサージでした。それまで足裏マッサージには「痛い」イメージがありましたが、その時私が受けたマッサージは極めてソフトなものでした。驚いたのは、50分程度の施術でひどい肩こりが軽快したり腸蠕動が劇的に改善したりしたことでした。そのうえ、とても心地よかったのです。
それからマッサージのリラクゼーション効果に興味を持つようになり、患者さんに施術することで苦痛を与えずに楽になっていただけるのではないか、と思っていました。

石田智恵子さん3

Q. ご自身で技術を取得して患者さんにも試してみたいと

A. ええ。ただし、安全面への十分な配慮は必要だと考えています。施術によって全身の循環がよくなり心拍数が挙がったり利尿が促進されたりしますが、循環動態が安定していない患者さんには負担が大きい場合もあります。施術前後には血圧を計るなどの慎重さが求められます。
この資格を取得している看護師は多いと聞いていますので、機会があれば施術の際の経験談を聞きたいと思っています。もちろん施術に当たっては主治医への確認が必要だと思いますが、確認の際に医師にどういう情報を提供すればいいのかなど、経験者の話は参考になると思われます。
患者さんに施術する前に、まず医療チームのメンバーに有効性を理解してもらうことも大切だと思っています。緩和ケアの医師に施術を体験してもらう機会を設けたいと思っています。

石田智恵子さん4

Q. ここまでの研修の中で、どのような手応えを感じていますか

A. 期待どおりの内容だと思っています。現在学んでいるのは、看護学生の頃に学んだ解剖整理と同様の内容ですが、復習するつもりで学んでいます。
リフレクソロジーでは「反射区」という身体の各臓器に対応する足裏のツボについて学びますが、初めて見たときは覚えられるのか不安でした。しかし、よく見てみると、足裏のツボは人体の臓器とほぼ同じ位置関係にあります。体内の臓器の位置をイメージしながらツボの位置を覚えていけばいいんだと思って安心しました。

石田智恵子さん5
石田智恵子さん
VOICE

石田智恵子さん #2

役職 : 外来師長・がん看護外来責任者・がん化学療法看護認定看護師

所属施設 : JCHO 船橋中央病院

実技をいかに反復して身に着けるかが大切であると感じました

Q. JRECのカリキュラムを振り返ってみて、業務や患者ケアにおいて役立つ知識は得られましたか。

A. 私としては、解剖生理学的な分野をあらためて学べた点と、施術の中で行うカウンセリング的要素について深い学びを得られた点が特に貴重でした。
リフレクソロジーのプロの方の施術の様子を見ていく中で、ふだん関わっている患者さんの生活背景に関しての情報を積極的に得た上で、仕事の中身や食生活、またストレスになるような生活因子がないかどうかなど、身体の状態が足裏に表れてくるような要素について細かくカウンセリングを行うわけです。
私自身、JRECでの受講内容は、主にリフレクソロジーの技術を取得する目的だけで捉えていたのですが、そうしたカウンセリングのスキルに関して学べることが多かったのは意外な点でもあり、ありがたかったですね。

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Q. 看護師としていつも行っているカウンセリングとは別の視点の内容が必要だと?

A. もちろん、それほど違いがあるというわけではないのですが、JRECでは相手に聞くべき内容のシートが用意されていて、それに沿って情報を得ていくこととともに、さらに必要と考えることを聞いていくようなイメージでした。こうしたツールを活用する方法もそうですし、患者さんとの対話を重視しながら、必要な情報をカウンセリングとして十分に把握していくことの重要性について、あらためて認識させてもらったという印象ですね。

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Q. 実習については、実際に受けてみてどのような印象を持ちましたか。

A. 最初に施術の様子をビデオで見たときには、単に流れを見るような感じで、それをどう効果的に自分で行えば、良い施術になるのかあまりピンときていなかったのです。その流れを覚えるために、家族に協力してもらって一通り実際に施術を行ってみたのですが、案の定、「あまり気持ちよくない」という反応で(笑)。
でも実際に実技を学んで、体重のかけ方や手足の力の入れ方などを実践的に学んだことで、自分ができていなかったこと、理解できていかなったのがどこかが明確に分かったんですね。実際に自分でやってみて腑に落ちました。やはり、リフレクソロジーは実践がとても重要で、どれだけ知識を詰め込むかよりも、実技をいかに反復して身に着けるかが大切であると感じました。
また実習の合間に何名かのインストラクターの方から施術を受けて、それぞれ人によって受ける感じが微妙に違うことも分かりましたし、リフレクソロジーの奥深さをあらためて知らされた思いでしたね。

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Q. 今回資格を取得して、そのスキルや技術を今後どのような形で生かしていきたいと考えていますか。

A. 私自身、技術はまだまだ未熟ですから、まずは実践的な場数をどんどん踏まなくてはいけないと思っています。そして今後は、私はがん患者さんに関わることが多いので、緩和ケアの面でリフレクソロジーの効果を生かすことができないかと考えています。体の倦怠感に悩む患者さんや、寝たきりになっているので気分転換が必要な方、不快感に近い痛みのある方などには、リフレクソロジーはきっと効果があると感じています。
そうした活用を実際のものにしていくためにも、院内に今回の受講内容を周知していく必要があり、その際には当然リスクの評価も重要です。さらに医師に対して効果を主張する場合には、データによる裏付けは欠かせません。だからこそ今回、JRECが発行するリフレクソロジーに関する書籍を購入して必要なデータを収集し、エビデンスをもとに医師やスタッフにリフレクソロジーの効果について紹介していきたいと考えています。

石田智恵子さん11

Q. 効果を医師に理解してもらうために必要なデータには何が挙げられますか。

A. たとえば施術前後で循環動態がどう変わっていったかを示すデータや、施術によってバイタルサインがどう変化するかを表す客観データが欲しいですね。実際に臨床の中で、ふだんのバイタルサインをチェックしながら、施術後に計測して数値変化がどうなっているのかといったデータを蓄積していくことは必要だと思います。

石田智恵子さん12

Q. 今後は、受講で学んだことを具体的にどう院内で広めていきたいですか。

A. 私1人の力で周知を徹底していくことはなかなか難しいですから、下村さんと力を合わせて具体的な企画を立てていきたいと考えています。
たとえば院内のスタッフ向けにリフレクソロジーを提供するサロンコーナーを設けて、「仕事終わりに癒しの時間はいかがですか?」と呼びかけるのも面白いのではないでしょうか。立ち寄ってくれた人に施術をすれば、私たちにとっても練習の一環にもなりますし、そこで心地良さを感じてもらえれば、リフレクソロジーへの理解や浸透にもつながるでしょう。
そして他科のスタッフからも、効果が適応する患者さんを紹介してもらって、施術を一人ひとりに提供できるような流れをつくりたいですね。そうした具体的な活動を通じながら、次のステップに進んでいきたいと思っています。

石田智恵子さん13
石田智恵子さん
VOICE

石田智恵子さん #最終回

役職 : 外来師長・がん看護外来責任者・がん化学療法看護認定看護師

所属施設 : JCHO 船橋中央病院

あらゆる看護の現場で
活かせる知識と技術を実感しています

Q. 資格取得から約1年が経ちました。
  リフレクソロジーを院内でどのように役立ててきたか教えてください。

A. いま現在、2つの方向で活用しています。1つはリフレクソロジー資格取得のきっかけにもなった、がん患者さんの緩和ケアです。もう1つは、昨年4月から担当している新人看護師育成のための研修です。ストレスマネジメントの一環として、リフレの施術が受けられるよう体制を整えました。

石田智恵子14

Q. 施術を受けた方の反応はいかがですか?

A. がん患者さんからは「楽になった」とおっしゃっていただいています。ターミナル期(※)の患者さんに施術する機会があり、その方は慢性的な倦怠感を訴え、お顔にも苦痛の表情が強く出ていらっしゃいました。施術を終えるととても和らいだお顔になって。お役に立てたという実感がありましたね。受講中は、もう少しステージが前の抗がん剤治療中の患者さんを対象とした緩和ケアをイメージしていました。資格を取得し、実際に様々ながん患者さんへの施術を通じて「抗がん剤治療を終えてステージが進んだ方」にもリフレクソロジーは有効だという手応えを感じています。
※ターミナル期=がんの終末期

石田智恵子15

Q. がん患者さん以外の患者さんへの施術も考えていますか?

A. そうですね。認知症をはじめとした脳神経系の患者さんにも向いているように思います。英国式リフレは足裏を刺激するといっても痛みはわずかです。脳へちょうどよい刺激を与えられるのではないでしょうか。また、オイルやパウダーを使うので、嗅覚からの刺激も期待できると思います。その他、訪問看護にも役立てられると考えています。当院の訪問看護師の一人が患者さんにマッサージを施しており、患者さんはそのマッサージが好きで訪問を楽しみにしてくれていると聞きました。リフレもマッサージと同様リラックス効果があるので、訪問看護というケアを受け入れ易くするツールの一つになると感じています。

石田智恵子16

Q. 新人教育での反応はいかがですか?

A. 基本的には希望者を対象として施術しているのですが、「足先があたたかくなった」「むくみが和らいだ」という感想が多いですね。立ち仕事のせいか、足の冷えやむくみを訴える看護師は少なくないです。新人は、不慣れな環境からくるストレスを抱えがちです。新人研修のアンケートから、特にストレスが溜まっていそうなスタッフがわかるので、私から声をかけることもありますね。興味を持っていても遠慮してしまうスタッフもいるので。

石田智恵子17

Q. なるほど。新人としては先輩に施術して欲しいと言い出し難いのでしょうか

A. そうですね。リフレクソロジーは足裏を素手でトリートメントするので、恥ずかしさもあると思います。スタッフへの施術は、院内に設けたサロンコーナーで行っています。施術の前に足湯に浸かれるようにするなど、施術を受け入れやすくする仕組みづくりがこれからの課題です。リフレは、足裏の刺激による効果はもちろん、施術中のリラックスしている状態でリフレクソロジストと話すことも、ストレス緩和に役立てられると感じています。施術は「話を引き出すコミュニケーションツール」でもあると思うんですね。話すことを通じて楽になる、そんな場でもあって欲しいと考えています。

石田智恵子18

Q. 院内の福利厚生としても役立てられそうですね。
  新人以外のスタッフへの施術も考えていますか?

A. はい。なるべく多くの方にリフレクソロジーを体験して欲しいので、新人さんに限らず受け付けています。医療現場はスタッフ向けの癒やしの場を設け難い環境です。リフレのサロンがスタッフのリラックスできる場として機能できれば、という思いもあります。施術を受けることはリフレへの理解に繋がるので、リフレの知識や技術周知のためにも続けたいですね。施術を受けたスタッフの中には、リフレの資格取得に興味を持つ人もいて、よい動機づけになっていると思います。

石田智恵子19

Q. リフレクソロジーを実際に施術することで、何か気づいたことはありましたか?

A. 特定の分野だけでなく、多岐にわたる看護の現場でリフレクソロジーは支えになりうると感じました。看護師は、院内の配置換えなどで関わる患者さんが変わることがあります。私自身も昨年から新人教育の責任者として赴任しましたが、新人教育の場でもリフレを役立てることができています。データを集めるのはこれからですが、患者さんスタッフ双方のQOL(※)向上に期待できると気づくことができたのも大きな収穫です。
※QOL=quality of life、生活の質

石田智恵子20

Q. 最後に、リフレクソロジー資格取得を考えている看護師さんにメッセージをお願いします

A. リフレクソロジーはリフレクソロジストとクライアント一対一で行う、個人で活動できる資格です。でも、病院など看護の現場で活用するには、仲間が多いほうがいい、そうあらためて感じた1年でした。上司をはじめ所属しているチームの理解無くしての施術は難しい現状があります。私もリフレ資格を持った看護師仲間とともにサロン開設の働きかけをしてきました。資格を取りたいと思ったら、ぜひまわりのスタッフも巻き込んでもらいたいと思います。仲間がいることで、リフレの効果が注目されているという説得力も増します。
最近の患者さんは、癒やしを求める傾向が強いと感じています。そのため「患者さんがリラックスできるケアの技術を身に着けたい」と考える看護師も増えています。リフレの知識や技術が、スタッフ各々の理想とするケア実現の一助になれるとうれしいです。

石田智恵子21

編集部より

石田さんは、今回の学びを、これからスタッフに広く周知しながらスキルの標準化をはかり、現場で患者さんにどう生かしていくかを考えていく段階に入っていきたいとおっしゃっています。次回は、現場導入への実践の様子を取材させていただき、読者の方々に紹介していきますのでご期待ください。